
ウィリアム・ワーズワースと松尾芭蕉を描いた新たな肖像画
日本の俳人の第一人者である松尾芭蕉とともに描かれたワーズワースの肖像作品。本作は、湖水地方在住の日本人美術家であるそブエヒデユキさんが柿衛文庫ミュージアム(伊丹市)で2016年9月より開催される展覧会『ワーズワースと芭蕉:歩く詩人』展のために制作したものです。本展は、イギリスよりワーズワース、そして日本より芭蕉の直筆原稿や書画と並んで、イギリスと日本から総勢20人以上の現代美術家たちの作品を一堂に集めた展覧会となっています。
この肖像画は、かつてワーズワースが生活を営んだライダル・マウント(アンブルサイド)にて、日本に送られる前に一晩限り公開されました。この特別な夕べは、ワーズワースの曾曾曾曾曾孫に当たるクリストファー・ワーズワース・アンドリューさんによるワーズワースの詩の朗読に加え、ソブエさんの芭蕉の句朗読などのひとときも用意され、作品の除幕式に彩りを添えました。
ワーズワースは日本で最も知られるロマン派の詩人ですが、その直筆原稿は日本では未公開でした。しかし、今回ワーズワース・トラストの協力のもと日本初公開の運びとなり、期待が寄せられています。
柿衛文庫は松尾芭蕉直筆の書画を含む日本の重要な俳諧コレクションを所蔵するミュージアムで、本展は9月17日より11月3日まで一般公開されています。また、記念講演会や関連講座、ギャラリーコンサートなども用意され、充実の展覧会となっています。くだんの肖像作品『Walking Poets』制作に当たり、ソブエさんは4枚のアルミニウム板を用いて、日本の襖絵に見立てた多翼画を構想、完成させました。ワーズワースと芭蕉が時空を超え、文化や言語の相違を超えて向き合う姿を通して、ソブエさんは、この歴史的な詩人たちの作品にも見られる、二人の慎ましく自然に即した生き方を表現しようと試みています。
この二人を結び合わせる要素として、ソブエさんが描いたのはモミジ。芭蕉はしばしばモミジをモチーフとした句を詠んでいますし、また、ワーズワースはライダル・マウントの庭園内に日本のモミジを植えるほど、この木を好んだのでした。
この特別な夕べに参加した、ジャパン・フォーラム代表を務めるコリン・フォックス氏曰く、「ワーズワースと芭蕉という、多くの類似点はあってもやはり異なる国同士の、それぞれ最も広く知られた歴史的な二人の詩人を相対して描いたヒデユキさんの肖像作品の初公開。この夕べに参加できたことをとても喜んでいます。また、二人の詩人の詩の朗読のひとときも素晴らしく、この特別な夕べをいっそう格別なものにしてくれました。」
Thursday 1st of September 2016